第1章 開いたままの弁
最初に出た赤い水は、デイヴィッドのバケツの底を打ち、外へ跳ね返るほど勢いがあった。三滴がティモシーのブーツに落ちた。一滴は袖口とミトンのあいだからのぞく素肌に落ち、温かそうな見た目に反して、小川の泥のように冷たくそこに載った。ティモシーはズボンで拭った。隣では、デイヴィッドが真鍮の区画キーを洗濯場枝管弁ハンドルに差し込み、慎重にもう四分の一回転させていた。
「錆だ」デイヴィッドは言った。「見えているのは、ただの錆だよ」
印刷された図面では、ハッシュウォーター・ロッジのこの一画は洗濯蒸気迷宮と呼ばれていた。そこで働いていた者たちがとうに死に、文句を言う心配がなくなってから、ホテルが部屋につける類の名前だ。ティモシーに言わせれば、ただの地下洗濯場だった。塗装された煉瓦壁。床の排水口。車輪のひび割れた帆布製の運搬車。高窓の下には業務用の絞り機が立ち、ローラーは古い油で茶色くなり、電源コードは10フィート離れた鉤に巻いて掛けてあった。向かいの壁では、洗濯板を並べた棚の下にラジエーターがうずくまっていた。鉄製の放熱板が六枚。どれも冷たかった。
ティモシーは指先を袖のさらに奥へ引っ込めた。「住居の温度計、まだ下がってたよ」
「だから循環系統のバランスを取っているんだ」デイヴィッドは真鍮の区画キーをベルトの内側の留め金に掛けた。保温シャツの上には、カルダー&レン・ホスピタリティから支給された管理人用のベストを着ていた。真鍮ボタンのついた緑のウール地で、まるで仮装した男が扱えばボイラーの調子もよくなるかのようだった。「空気が溜まると還り管の流れが止まる。ここで空気を抜けば、あちらの循環がよくなる。ごく普通の保守作業だ」
赤い水がバケツへ噴き出した。続いて空気が咳き込むように吐き出され、金属質の細い音がシューッと鳴った。デヴォン・スミスはラジエーターの脇にしゃがみ込み、分厚い片手に温度計、もう片方に点検用タイマーを持っていた。短い銀色の顎髭に、煤が二粒ついていた。ドライバーの木製の柄で送り管のエルボを叩き、耳を澄ませてから、タイマーのボタンを押した。
「今の操作が末端に現れるまで12分だ」デヴォンが言った。「ポンプがキャビテーションを起こしつづけるなら、もっとかかる。そこまではわかっている。あとは測る」
デイヴィッドは、リンダに台所道具をベルウェザー山まで運び上げる気にさせ、ティモシーにも、この冬こそはこれまで三度の『今度こそ違う』とは違うかもしれないと思わせた、あの笑みを浮かべた。「ほらな。古い設備は、決めた時刻どおりには動かないものだ」
それは本当だった。ただ、少しも安心はできなかった。
タイマーが時を刻むあいだに、デイヴィッドはバケツを床の排水口まで運び、デヴォンは弁を開けた時刻を作業着の袖口に書きつけた。ティモシーは残った。湿った糸くずが、灰色の縄のように部屋の隅へこびりついていた。石造りの流し台の上に並ぶ真鍮の蛇口は口のまわりが緑青に染まり、数秒おきに風が高窓へひとつかみの雪を押しつけた。紙を爪で引っかくような、乾いた素早い音がした。上へ戻ることもできた。デイヴィッドにもそう言われていた。それでもティモシーはラジエーターを見つめ、配管の中に変化が訪れるのを待った。
12分後、送り管のエルボがカチリと鳴った。かすかなぬくもりが最初の放熱板へ移った。ミトン越しのティモシーの手には感じられなくても、デヴォンの計器にははっきり現れていた。室温そのものはまだ華氏52度に達していなかった。デヴォンは二人に黒い線を見せてから、温度計を棚へ戻した。
「管は応えている」デヴォンは言った。「部屋はまだだ」
ティモシーは右手のミトンを外した。町の反対側にあるマーロウ家の玄関ポーチと、道路からは誰にも見えない曲がった梯子の下に横たわるミスター・マーロウを思い出した。ティモシーは、ミスター・マーロウの首が痛いのだとデイヴィッドに話した。するとデイヴィッドは、それを「当てずっぽうだ」、次には「悪い夢だった」、最後には「作り話だった」と言い直させた。訂正するたび、言葉は口の中で小さくなり、腹の中ではいっそう気分の悪いものになった。教訓はわかっていた。夕食がどうしても欲しければ、奇妙な真実も嘘になる。
ティモシーは温まりかけた鉄に掌を押し当てた。
洗濯場はどこへも行かないまま消えた。圧力が、もっと小さな四本の指を締めつけた。ゴムローラーが布を、皮膚を、袖口を呑み込んだ。甲高いベルが一度鳴った。焦げたウールの臭いが鼻を満たした。誰かが「詰まりを除け、坊主、詰まりを除け」と言った。命令は背後から飛んできたが、そのあいだにも手は前へ運ばれ、もう平たく潰れ、手など入るはずのない場所へ引き込まれていった。ティモシーの肩が機械のほうへ激しく引かれた。白い棒のような痛みが腕を走った。
ティモシーはラジエーターから手を引き剥がし、片膝をついて床へ落ちた。掌は付け根から指先まで赤くなっていた。絞り機は10フィート離れた場所にあり、音も立てず、電源もつながっていなかった。
デヴォンがティモシーの肘をつかんだ。「今どこにいるか言ってみろ」
「洗濯場」ティモシーは唾を呑んだ。焦げたウールがまだ舌にまとわりついていた。「男の子が、手を引き込まれた。絞り機に。上着を着てた。誰かに、詰まりを除けって言われた」
デイヴィッドの顔が、口元だけこわばった。「ティム」
「弁を閉めて」ティモシーは立ち上がった。膝はまた折れそうだった。傷めた手を胸に抱えた。「お願い。部屋が温まる前に閉めて」
デイヴィッドは室温計の下に手の甲を触れないようかざして確かめた。あまりに無意味な癖で、ティモシーは笑いそうになった。「まだ、さっきおまえが読んだ設定温度より低い。冷たい鉄に触って、あの機械を見て勝手に怖くなったんだ」
「管のところの鉄は冷たくなかった」デヴォンが言った。掌には触れず、指でティモシーの手首を返した。「それに、これは接触痕だが、私には説明がつかない」
出た。説明がつかない。扉を開いたままにしておくとき、大人が使う言葉だ。デイヴィッドは天井を見上げた。業務室の上にある管理人住居へ目を向け、それからベルトのキーへ視線を落とした。「住居には循環が必要だ。バランスが安定するまで、この枝管は開けておく。ティモシーにあんな発作があったからといって、凍りつく寸前まで冷えつづける部屋でリンダに料理をさせ、眠らせるわけにはいかない」
ティモシーは言った。「ぼくのものじゃなかった」
デイヴィッドはバケツを持ち上げた。「上へ行け。二人とも。ここでの作業は終わりだ」
夕食のころには、リンダがティモシーの掌をガーゼと清潔な布巾で包んでいた。救急鞄が、ハッシュウォーター・ロッジにある役立つはずの97の戸棚のどれかへ消えてしまっていたからだ。リンダは指を一本ずつ調べ、それから爪の下の色を確かめた。赤褐色の髪はウールのヘッドバンドの下に収められ、そばかすのある片頬には小麦粉が筋になってついていた。管理人住居の食卓では、四つの鉢に注いだスープの表面に膜が張っていた。脇のラジエーターが一度、二度と音を立て、それきり静かになった。
「こうすると痛い?」リンダはティモシーの親指の腹を押した。
「絞り機よりは痛くない」
リンダの手が半秒止まった。「それは比較であって、答えじゃないわ」
「うん。でも動かせる」
台所のカウンターに置かれた無線機が、押し寄せる雑音を割って鳴った。デヴォンは片手をスピーカーにかぶせ、顔を寄せた。東斜面消防協同隊の通信指令員の声は、はるか下から、しかも半分水中にいるかのように聞こえた。進入路は3つ目の折り返しで吹き溜まりに塞がれていた。郡の除雪車もステイヴリーで引き返した。上がってくる者はいないし、デヴォンのトラックも下りられない。
報告が終わると、デイヴィッドは背筋を伸ばした。悪い知らせが、自分のやるべき仕事をひとつ差し出してきたときの姿勢だった。「なら、使える状態に保てる作業室は全部必要になる。デヴォンは泊まりになるかもしれない。洗濯場には流し台も排水口も、専用の枝管もある。今閉めるのは無駄だ」
リンダは屋内にいるにもかかわらず、ティモシーのマフラーを結び直した。「その子が、少年を殺したと言っている部屋よ」
「ラジエーターに触ってパニックを起こした部屋だ。その二つは別の話だ」
デヴォンは数字を書いた作業着の袖口を鉢の脇に置いた。文字は滲んでいたが、ティモシーにはまだ矢印を追えた。「無線で話しているあいだに、洗濯場は華氏52度を越えた。時刻は記録した。デイヴィッドが正確なバランス測定値を欲しいなら、その温度を保たなければならない」
「どのくらい?」リンダが尋ねた。
デヴォンが答えるより先に、デイヴィッドが言った。「連続30分。それから、恐れではなく証拠をもとに判断する」
ティモシーは父を見た。デイヴィッドの口にかかると、恐れは汚いものに聞こえた。誰かが不注意にも清潔なリネンの上へ落とした、濡れ雑巾のように。住居の温度計は寝室の扉の脇に掛かっていた。話しているあいだにも、黒い線は下がっていた。ティモシーの鉢では、スープの脂がニンジンのまわりで固まりかけていた。
デヴォンは椅子を無線機へ寄せ、数分おきに二つの部屋の温度を記録した。洗濯場は温度を保った。住居からは、つねるように少しずつ熱が失われていった。一度ごとの低下は言い立てるほどでもなかったが、すべてを足せば大きかった。濡れ雪が台所の窓ガラスに当たり、そこへ貼りついた。リンダは寝室から毛布を運び、ティモシーの肩に一枚掛けた。デイヴィッドはスープを食べた。スプーンを動かすと表面の膜に跡が残るほど冷めていたのに。
連続30分が終わったとき、階下で呼出しベルが鳴った。
澄んだ音が一度。床板を抜けて上がってきて、鉢を震わせた。
デヴォンはタイマーを見た。リンダはティモシーを見た。デイヴィッドは住居の扉へ目を向けた。三人のなかでそれがいちばん悪かった。洗濯場のベルがどこにあり、外された配線がどこで途切れているか、デイヴィッドは正確に知っていたからだ。
二度目のベルは、一同が業務用階段へ着く前に鳴った。ティモシーは毛布を片方の肩から引きずって先を走った。住居から洗濯場までの館内は、鼻を刺すほど冷えていた。背後でリンダが名前を呼んだ。だが、熱い埃に混じる焦げたウールの臭いが戻っていた。階段の下で何が待っているか、ティモシーにはわかっていた。
塗装された煉瓦壁には、蒸気がびっしりと珠を結んでいた。高窓は汗をかいていた。絞り機のそばでは、臙脂色のベルボーイの上着を着た少年が、結露のなかから歩み出て、挨拶するように片手を上げた。ティモシーより年上で、細身で背が高く、濃いめの褐色の肌をしていた。袖口は焦げていた。腰には真鍮タグ用のポーチをつけていた。短く刈った黒髪の上に、帽子がまっすぐ載っていた。温かそうだった。全身くまなく温かそうだった。そんな当たり前の事実が、どんな透けた幽霊よりもティモシーを怖がらせた。
少年は二本の指を帽子へ当てた。訓練で身につけた接客用の笑みが浮かびかけ、ほんのわずか形になりきらなかった。「旦那様、なぜ誰も弁を元に戻さなかったのですか」
少年の背後で、絞り機のローラーが回っていた。
スイッチは下がったままだった。プラグも鉤に掛かったままだった。動くゴムの表面で油が光り、少年の袖口の緩んだ端がローラーへ向かって浮き上がった。少年は離れようとした。右肩が機械のほうへ引き戻された。
「逃げて!」ティモシーは叫んだ。
少年の袖がローラーへ入った。ティモシーは部屋を駆け抜け、肘の下で臙脂色の布をつかんだ。一秒のあいだ、その布はどこにでもあるホテルの制服と同じ感触だった。厚く、安っぽく、仕事で湿っていた。次の瞬間、絞り機が引いた。包帯を巻いたティモシーの掌が、少年の手首をこすった。圧迫がコート越しにティモシーの前腕を締めつけ、二本の骨をすり合わせるほど深く食い込んだ。少年が小さく驚いた声を漏らした。ローラーに当たって手が折れ曲がったところから血が袖口を濃く染め、それでも機械は少年を引き込みつづけた。
リンダが両腕をティモシーの腰へ回して固定し、後ろへ引いた。ティモシーのブーツが結露で濡れた床を滑った。デヴォンは枝管弁ハンドルへ飛びつき、キー穴を見つけ、デイヴィッドを見た。
デイヴィッドは片手をベルトに置いたまま、戸口の内側に立っていた。顔から表情が消えていた。指のあいだでキーが光っていたが、留め金から外そうとはしなかった。
「渡して!」リンダが言った。
ティモシーは肩が焼けるように痛むまで引いた。少年は、閉じ込められた手を、身についた恐ろしい動作で横向きにした。まるで同じ忌まわしい難題を百年ものあいだ解こうとしつづけてきたかのようだった。ローラーがさらに1インチ、袖を呑み込んだ。
デヴォンは、開いた留め金から真鍮の区画キーをもぎ取った。キーをハンドルへ差し込み、片方のブーツを壁に踏ん張って、枝管弁を力いっぱい回して閉じた。配管の抵抗がハンドル越しに伝わった。煉瓦の向こうのどこかで、水撃音が一度鳴った。
ローラーが止まった。
リンダとティモシーは一緒に後ろへ倒れた。ベルボーイはティモシーの両脚の上に横ざまに落ち、その重みでティモシーの踵が床にぶつかった。少年はすぐに脚から転がり降り、傷めた腕を胸元に抱えて座った。灰色の圧迫痕が右手から肘へ向かって延びていた。袖口からは血が流れつづけたが、床へ届くことはなかった。溜まっては消え、また溜まった。
「閉じた」デヴォンは親指で点検用タイマーを押した。「変化がここまで届くまで、部屋は温かいままだ。12分」
デイヴィッドは絞り機を見つめた。「電源は入っていない」
「うん」ティモシーは膝立ちになった。「入ってない」
ベルボーイはデイヴィッドからティモシーへ目を移した。恐怖で、その声から磨き上げられた接客の響きが消えた。「支配人は来るのですか。夕食の給仕の前に詰まりを除けるよう言われました。やろうとはしたのです、旦那様」
「名前は?」ティモシーが尋ねた。
少年は口を開いた。ローラーがぴくりと動き、目から焦点が失われた。「私は、言われて――」
ティモシーは少年と機械のあいだへ移った。その角度からは、鉄の脚の奥が見えた。臙脂色の布が楔形に挟まり、片側が黒く焦げ、何年分もの糸くずの下で押し潰されていた。ティモシーは排水管の向こうへ手を伸ばし、ベルボーイの帽子を引き出した。その帽子は、手に取っても潰れたままだった。冷たい灰と鼠の糞の臭いがした。内側の帯には、色褪せた縫い目で二つの単語が形作られていた。
「ケネス・デイヴィス」ティモシーは読み上げた。
少年は瞬きをした。自分の頭に載ったきれいな帽子へ手を上げた。「ケネス」確かめるように口にした。それから、もっと確かな声で言った。「そうです。ケネス・デイヴィス。それは私のものです」
ティモシーは焦げた帽子を、開いた戸口へ運んだ。向こうの業務通路は、吐く息が見えるほど冷えていた。帽子はティモシーと一緒に境を越えた。ケネスもあとを追ったが、磨かれた靴が真鍮の敷居板へ達したところで、体が何もない空間にぶつかった。衝撃で頭が前へかくんと折れ、一歩後ろへ弾き返された。両方の掌を突き出すと、温かい洗濯場の空気と冷たい通路の空気が接する場所で、抵抗にぶつかった。
「ガラスがあります」ケネスが言った。
「ないわ」リンダが答えた。ティモシーの隣へ移り、戸口へ片手を差し出した。指はそのまま通り抜けた。「あるのは冷気だけ」
ケネスはもっとゆっくり、もう一度試した。指先が何もないものに押しつけられて平らになった。再現された帽子は頭に残り、形も整い、焦げてもいなかった。境の反対側にある普通の帽子は、ティモシーの手の中でへたっていた。
デヴォンは温度計のそばに膝をつき、点検記録へ直接書き込んだ。「一人。線より上では実体あり。冷気の境界に封じ込められる。現存する物体は境界を越える。本人が身につけた衣服は越えない」
ティモシーは振り返った。「それに、閉じた影響はまだこの部屋へ届いてない」
デヴォンはティモシーの目を見た。笑いも、子どもに向ける優しい声もなかった。「そのとおりだ」
その一言は、デイヴィッドが無理に言わせたどの訂正にもできなかったことを成し遂げた。ティモシーはケネスの焦げた帽子を、ローラーから離して絞り機の後ろへ置いた。それから父に答えを求める代わりに、自分が得た情報をデヴォンへ伝えた。「温かい部屋と一緒に現れた。機械も一緒だった。命令されたことと手のことは覚えてる。でも、死んだときの全部は覚えてない。戸口から先へは出られない。古い帽子は古いまま」
デヴォンは、その違いを一つ残らず記録した。
温度計の黒い線が下がっていった。ケネスは傷のないほうの手を上げ、境界を探りながら敷居の近くに立っていた。その輪郭はデイヴィッドのものと同じほど確かだった。今となっては、そのほうがかえって恐ろしかった。少年の上着についた湿った糸くずも、顎の脇にある髭剃り傷も、真鍮の客室札の一枚で塗装が欠けているところも、ティモシーには見えた。人間が、瑕疵のひとつひとつまで組み上げられていた。
「壁です」ケネスが突然言った。視線はティモシーの向こう、業務用階段へ向けられていた。「皆様のお部屋は還り管の上にあります。寝室の壁、管が――」
温度計が華氏52度を下回った。
ケネスは「管」と次に続くはずの言葉のあいだで消えた。血も、きれいな制服も、頭の帽子も一緒に消えた。焦げたベルボーイの帽子は、ティモシーが置いた場所に残った。一拍のあいだ、洗濯場にいるのは生きた四人と、動かない機械と、12分を示す点検用タイマーだけだった。
そのとき、頭上で亀裂の走る音がした。
続いて重い水音がし、リンダが鋭く無駄のない悪態をついた。管理人住居の寝室の壁を水が突き破った。その音は2階下でも聞こえるほど大きかった。漆喰が床へ落ちた。さらに大量の水が押し寄せ、濡れた寝具が叩きつけられる紛れもない音が混じった。
リンダはもう階段へ駆け出していた。デヴォンは閉じたハンドルから真鍮の区画キーを抜き、すぐ後ろにデイヴィッドを従えて追った。ティモシーは落ちた毛布を拾い上げ、三人のあとを追った。その上では水が広がり、衣服を、寝床を、そして一家がハッシュウォーター・ロッジへ持ち込んだ温かいものすべてを見つけ出していた。
